2020年1月8日水曜日

テーロス還魂記デッキ構築――神話のタイタンでデッキを作ろう

ギリシャ神話における主神といえばゼウスを始めとするオリンポス12神である。

宙に輝く星座を始めとして数多の説話に彩られたオリンポス12神だが、あくまで主要な神々という位置づけであり、始祖と言える存在ではない。

ギリシャ神話大系において、祖神と言えるのはガイアとウラノスであり、オリンポス12神は孫の世代なのだ――その一世代前に世界を統べたのが、クロノスを筆頭とするティターン12神だ。



日本神話における天照大神率いる天津神と大国主に代表される国津神、仏教に取り入れられた古代インドの神々である天龍八部衆、キリスト教にみられる七つの大罪等々、等々。

時を越え場所を変え、信心が変質することはままあること――神話を内包する神話は、世界中にみられることである。

MTG始まりのタイタンといえば《丘巨人》だが、時代を風靡したのは《原始のタイタン》を筆頭とした6マナタイタンサイクルだろう。

その強さは、《悪斬の天使》一強時代を終焉に導き、6マナ以降のマナ域の選択肢を大幅に狭める結果となった。

6/6/6という優秀なスタッツに、3つの能力――戦場に出た時と戦闘に参加した時に誘発する能力の組み合わせが強力過ぎた。

高マナ域のクリーチャーは、場に出た次の自分のターンまでに除去されてしまうと一切仕事をしないという、至極当たり前かつ難題を抱えていた。その点、タイタンシリーズは、場に出た瞬間に仕事をしており、その分だけアドバンテージを失う場面が少なかった。

《墓所のタイタン》と《業火のタイタン》は特に好きだったカードで、あまりに好きだったのでモダンGPにラクドスミッドレンジ(別名緑が事故ったジャンド)で挑んだほどだ。



旧テーロスブロックでは意図的にあまり取り上げられていなかったタイタン要素だが、《テーロス還魂記》ではトップダウン方式のデザインカードの一環として、神話レアのレジェンドクリーチャーとなった。

《自然の怒りのタイタン、ウーロ》と、《死の飢えのタイタン、クロクサ》という、2体のエルダー・巨人だ。




ネーミングとしては、ウロノスとクロノスが元ネタだろうか。

エルダー……この2体は、PWになる前のボーラスやその兄弟と同格の存在といえるだろう。

テーロス還魂記の新能力である脱出持ちであり、エルズペスともども、死の国に封印されていたフレーバーとよく噛み合っている。

能力は強力の一言。テキストを読み上げるだけでそのやばさがわかるのではないだろうか。

いわば逆想起――本来のマナコストが軽いデザインに、かっての6マナタイタン同様の戦場に出た時と戦闘に参加した時に誘発する能力。脱出による墓地からの復活に、6/6という優秀なスタッツ。

アドバンテージの塊といえ、ただただ強いカードだ。

特に《自然の怒りのタイタン、ウーロ》は凄まじく、スタンダードのシミックがどこまで強くなるのか戦線恐懼となっている。

《むかしむかし》、《夏の帳》、《王冠泥棒、オーコ》がいた環境で、本当にウィザーズはテストプレイしていたのだろうか。

ウィザーズは最高の企業なのでしていたのだろうが、《金のガチョウ》→《王冠泥棒、オーコ》でゲームセットしていた環境に、さらなる強力カードを投入するだなんて、どうかしている。華々しく始まったプレイデザインチームだが、もはや機能しているとは言い難い。

勿論、その前身といえる彼らのFFリーグが役にたっていたかといえば、全くそんなことはないのだが……?









さっそくデッキ案を紹介していこう。

久々のスタンダード対応――まずは、シミックランプだ。

パイオニアのMFが近いというのに、こんなことをしている場合なのだろうか。

【シミックランプ――テーロス還魂記対応】

クリーチャー:21枚
2《樹上の草食獣》
4《枝葉族のドルイド》
3《ハイドロイド混成体》
4《発現する浅瀬》
4《自然の怒りのタイタン、ウーロ》
4《茨の騎兵》

呪文:12枚
4《成長のらせん》
3《伝承の収集者、タミヨウ》
3《世界を揺るがす者、ニッサ》
2《キオーラ、海神を打ち倒す》

土地:27枚
4《繁殖池》
4《神秘の神殿》
10《森》
5《島》
2《ギャレンブリグ城》
2《ヴァントレス城》



エレメンタルシナジーを取り入れたシミックランプは、MCⅦで良好な成績を残している。上記の記事は、非常に有意義な調整録であり、是非とも目を通してほしい。現代MTGにおけるプロの調整の一端が垣間見えるし、日本勢の最近の成績を考える理由にもなる。

エレメンタルシナジーの要である《茨の騎兵》、その特色は墓地を4枚増やすことが可能な点だ。

神話タイタンを場に定着させるために必要なのは脱出コスト――5枚の墓地。その数字を容易に達成することが出来るのだ。

もともと、3マナ域に《発現する浅瀬》という膨大なアドバンテージを稼ぐ可能性があるものの、アグロ相手には悠長な動きしかないのがシミックランプの弱点ともいえた。

《王冠泥棒、オーコ》がいればスタンレベルのアグロなど何の問題もなかったのだが、あまりの鹿っぷりに久遠の闇に消えて久しい。

《自然の怒りのタイタン、ウーロ》であれば、同マナ域かつ3点ゲインという、1マナ重い《成長のらせん》以上の力を発揮する。《治癒の軟膏》相当といえども、良質なゲイン手段といえる。

これが、墓地からも唱えられ、その際はクリーチャーとなり、さらに戦闘に参加するだけでもう一つおまけにどんといたせり尽くせりでランプデッキのアグロ耐性がいきなり上がった感じがある。

墓地リソースを稼ぐ手段として追加で採用したのが《伝承の収集者、タミヨウ》だ。

最近なかなか姿をみないが、ケシスデッキや《戦慄衆の指揮》デッキ、ネクサスでも抜群の力を発揮したように、このPWの墓地耕しも相当なもの。

環境屈指の墓地肥しである2枚があれば、積極的に脱出を狙えるだろう。

このデッキに採用したもう1枚の新規カードが、《キオーラ、海神を打ち倒す》だ。

テーロス還魂記で復活した英雄譚。書いてあることは、場に着地すればゲームに勝つと言い換えることが可能な絶大な能力といえる。



《伝承の収集者、タミヨウ》で使い回せれば概ね勝ちといえるだろう。

呪禁持ちの8/8クリーチャーを返せるデッキはそう多くないし、その後のタップ+アンタップ飛ばしやコントロール奪取(ついでのようにアンタップ)と無茶苦茶である。

【息を吸うようにグリクシス】

クリーチャー:14枚
4《死の飢えのタイタン、クロクサ》
4《砕骨の巨人》
2《厚かましい借り手》
2《残忍な騎士》
2《半真実の信託者、アトリス》

呪文:20枚
4《思考消去》
2《暴君の嘲笑》
2《アングラスの暴力》
4《意味の渇望》
2《王家の跡継ぎ》
3《エレボスの介入》
3《龍神、ニコル・ボーラス》

土地:26枚
4《湿った墓》
4《血の墓所》
2《蒸気孔》
4《悪意の神殿》
4《欺瞞の神殿》
2《寓話の小道》
1《ヴァントレス城》
3《沼》
1《島》
1《山》

意外に新カードが手に入ったのがグリクシスコントロールだ。まだまだプレビュー途中だが、結構新鮮味のあるデッキになった。

勿論、元々息をしていなかっただけかもしれないが、それはそれ。

せっかくなので紹介していこう。






友好色占術ランドの復活によるマナベースの改善がもっとも大きい恩恵だが、他にも粒よりなカードが揃っている。

コンセプトとしては、《思考消去》と《死の飢えのタイタン、クロクサ》という強力な2マナハンデスからの除去ってニコルボーラスで蓋という変わり映えしないお馴染みの動きだ。

《王家の跡継ぎ》と出来事クリーチャーによるビートダウンも可能であり、ミッドレンジ要素も兼ねている。

《龍神、ニコル・ボーラス》は強力でフィニッシャーなのだが、現環境はどのデッキも強力なリソース源を擁しており、1枚でコントロールしきるのは難しい。

それならば、殴り殺した方が早いし、《死の飢えのタイタン、クロクサ》はさらにその戦略を推し進める逸品だ。

墓地リソースの獲得手段として、3マナPWである《王家の跡継ぎ》に加え、《意味の渇望》と《半真実の信託者、アリトリス》を採用している。

《意味の渇望》は、かっての《知識の渇望》枠。3マナ3ドローでインスタントはさすがに強そう。2枚捨てなければならないが、この手のハンデス除去デッキは、すぐに盤面と噛み合わない手札になりやすいため、問題ないだろう。

戦場が空の時の除去カードの虚無感、相手の手札が0の時のハンデストップの絶望、それらを解消してくれる良カードだ。

《半真実の信託者、アリトリス》は、豪華の王っぽくて好き。強さはそれほどであり、現スタンのカードパワーには追い付けていないような気がするが、ただ好みなカードだ。

《エレボスの介入》という強力除去の参入も嬉しい限り。ライフゲイン要素の欠如は、ショックランド環境と相まって、コントロール戦略の弱点となっていた。うまくいけば猫カマドを阻害できるぞ(まず無理)。

そして、《死の飢えのタイタン、クロウサ》は2マナのハンデスであり、4マナの強力クリーチャー……そう考えると、5マナはまぁまぁ強いが他のマナ域のカードが弱い、グリクシスの欲していたカードといえるのかもしれない。

終わりに

2種類のデッキを紹介したが、他にもタイタンと組み合わせたいカードは多数存在する。

《隠された手、ケシス》で墓地からマナの分だけタイタンを唱えると気持ちよくなるだろうし、元のコストが軽めな点を利用して《万面相、ラザーヴ》と組み合わせてもいいだろう。

通常コストでの支払いであれば一瞬戦場に出る点を利用して、《魔女のかまど》で食物・トークン2枚に変換するのも旨みがある。生贄なので、サクリファイス系のデッキとも相性は良好だ。

脱出を利用するなら、ドレッジ系のデッキだろう。パイオニアでも一定数いるドレッジデッキの福音となれるだろうか。

多数の要素が詰め込まれており、その可能性は無限大。是非ともデッキを作ってみたいカードだ。

0 件のコメント:

コメントを投稿