環境を席捲する赤黒機体
このカードにどれだけ泣かされてきたか。 |
以前の記事で、カラデシュブロック発売時より環境に存在し続けているマルドゥ機体ですが、現環境においては二極化しながら隆盛する可能性があると書きました。
ドミナリアが加わり、類を見ない豊富なカードプールは、2色であっても、3色使用時と遜色ないカードパワーを手に入れることを可能にしています。
MTGのデッキは60枚。強力なカード群でデッキリストを埋め尽くすことことが出来れば、わざわざ色を1つ増やす必要はありません。
色を減らせば、土地事故が減ります。現代MTGにおいて、土地事故は即敗北につながります。
二つの道を歩み始めたマルドゥ機体。
一つは《ベナリア史》や《黎明をもたらす者ライラ》を手に入れた白黒機体。
そして、もう一つが《ゴブリンの鎖回し》や《ウルザの後継、カーン》を手に入れた赤黒機体です。
BMO Vol.10時点にて、ジョニーのお店のスポンサープロである松本郁哉選手が赤タッチ黒アグロを使用していました。環境を席巻し、禁止カードを輩出したラムナプレッドとも呼ばれる赤単アグロですが、黒を足すことでさらに粘り強く戦うことを可能にした構築がありました。《屑鉄場のたかり屋》は継続的な攻め手となり、《無許可の分解》はクリーチャー除去兼本体火力という唯一無二の働きをしました。
高尾選手や覚前選手が好んで使用していた印象があります。
GPバーミンガムとMOPTQ。
リアルと電脳、二つの大規模イベントで環境を席巻したのは、奇しくも同じデッキタイプでした。
赤黒機体が満を持して登場したのです。
その成績は驚愕の一言。
MOPTQでは1-28位(7勝2敗ーベスト8以上の成績)に12名。
GPバーミンガムではベスト32位内に15名。
そのうちベスト8に6名を送り込むという、圧倒的な成績を収めました。
では、その勝ち組だった要因は何でしょうか。
機体デッキの強さは様々な攻め手にあります。
デッキ名である、《キランの真意号》を筆頭とした除去耐性のある機体カード。
墓地から何度でも蘇ってくる《屑鉄場のたかり屋》。
環境随一の強力な4マナPWである《ウルザの後継、カーン》と《反逆の先導者、チャンドラ》。
《無許可の分解》を始めとした直接ダメージ。
粘り強く振る舞い、対戦相手のライフをじわじわと、時には一気に削りとっていきます。
もう一点大事な部分。それは、赤黒機体が様々なゲームスピードを保持している点のです。
現代MTGの大原則に、ゲームスピードをコントロールできるデッキは強いというものがあります。
では、ゲームスピードとは何でしょうか。
アグロ>アグロミッドレンジ>コントロールミッドレンジ>コントロールと、デッキの持つスピード別に、4種類に分けることができます。
そして、赤黒機体は、アグロ~コントロールミッドレンジと、幅広いスピードで戦うことが出来るのです。
1ターン目《発明者の見習い》→2ターン目《キランの真意号》というアグロな展開。
2ターン目《削剥》→3ターン目《ピア・ナラー》というアグロミッドレンジな展開。
3ターン目《ゴブリンの鎖鳴らし》→4ターン目《反逆の先導者、チャンドラ》or《ウルザの後継、カーン》というコントロールミッドレンジな動き。
多種多様なゲームスピードと展開は、対戦相手を幻惑させます。対戦相手がキープした初手が適切なのかどうか、ゲームを始めてみないとわからないのです。
これは、サイドボード後により顕著となります。
概ね、デッキを重くしカードパワーを高める戦略――軽量クリーチャーを抜き、PW中心となることが多いですが、それは使い手の感覚次第です。
軽量除去を抜いた時に1ターン目《発明者の見習い》からゲームが始まったら?
軽量除去過多の時に、《ウルザの後継、カーン》を置かれたら?
もちろん、逆もしかりです。しかし、かみ合わせの不具合を打ち砕くだけのデッキパワーがあります。
そもそも、アグロなのですから。
スピードの自由さ、それに伴い、現在の赤黒機体はデッキリストが定まっていないのが現状です。
まだまだ調整の余地が残されていると思います。
スタンダードの感想 pic.twitter.com/SilPzdx4RN— Yuuki Ichikawa (@serra2020) 2018年5月13日
それでは、デッキリストを2つ紹介します。
赤黒機体(アグロミッドレンジ寄り)
GPバーミンガム1位
クリーチャー:19枚
3《損魂魔道士》
4《屑鉄場のたかり屋》
2《歩行バリスタ》
4《ゴブリンの鎖回し》
2《ピア・ナラー》
2《再燃するフェニックス》
2《栄光をもたらすもの》
呪文:16枚
2《マグマのしぶき》
4《削剥》
3《キランの真意号》
3《無許可の分解》
2《反逆の先導者、チャンドラ》
2《ウルザの後継、カーン》
土地:25枚
4《泥濘の峡谷》
4《竜髑髏の山頂》
2《燃え殻の痩せ地》
2《産業の塔》
1《霊気拠点》
11《山》
1《沼》
サイドボード:15枚
3《強迫》
2《チャンドラの敗北》
1《木端+微塵》
1《大災厄》
1《焦熱の連続砲撃》
1《無情な略奪》
1《グレムリン開放》
1《ヴラスカの侮辱》
1《反逆の先導者、チャンドラ》
1《ウルザの後継、カーン》
1《炎鎖のアングラス》
1《栄光をもたらすもの》
赤黒機体(アグロ寄り)
GPバーミンガム6位
クリーチャー:21枚
4《ボーマットの急使》
4《発明者の見習い》
4《屑鉄場のたかり屋》
3《歩行バリスタ》
4《ゴブリンの鎖回し》
2《ピア・ナラー》
呪文:15枚
1《木端+微塵》
3《削剥》
3《キランの真意号》
4《無許可の分解》
2《反逆の先導者、チャンドラ》
2《ウルザの後継、カーン》
土地:24枚
4《泥濘の峡谷》
4《竜髑髏の山頂》
4《産業の塔》
1《霊気拠点》
11《山》
サイドボード:15枚
2《強迫》
1《木端+微塵》
1《宝物の地図》
2《大災厄》
2《霊気圏の収集艇》
1《グレムリン開放》
1《栄光の刻》
2《再燃するフェニックス》
1《反逆の先導者、チャンドラ》
2《栄光をもたらすもの》
GPバーミンガムでは、同型を意識し、重いカードや《鎖鳴らし》とのプチコンボも強力な《損魂魔道士》を増やした赤黒機体が優勝しました。
しかし、です。重く強力なカードをデッキを何も考えずに入れてもいいわけではありません。
アグロの戦略上の優位性は、その手数にあります。コントロールが1ターンに1回しか行動できない序盤に、複数行動を行うことでゲームの主導権を握ります(テンポの獲得、でしょうか)
どれだけ強いカードを引こうが、ゲーム中に使用できなければ意味はありません。それは引かなかったのと同じなのです。
では、重くするとどうなるでしょうか。それは、重いデッキ――コントロールの土俵で戦うことになります。
それがMTGの面白いところです。同型デッキの戦いは重く強力なカードを有する方が強いです。
おそらく、増量した重量級カードをスムーズに使用するために、優勝デッキは土地25枚にしているのでしょう。
しかし、重くすればするだけ、環境において最重量級であるコントロールに太刀打ちできなくなります。
それがメタゲームの妙なのです。
現在のトップメタは赤黒です。
それは間違いないでしょう。これだけの上位入賞者を誇るのですから。
しかし、このままトップメタを維持できるかどうかはわかりません。
2週続けて上位陣を占めることで、初めてトップメタといえるでしょう。
しかし、何時の時代も《キランの真意号》と《屑鉄場のたかり屋》は強いものです。
フルパワー時のマルドゥ機体において、《ゼンディガーの同盟者ギデオン》と並び、禁止カードの候補に挙げられていただけのことはありますね。
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