アルファ・ベータ・リヴァイズド――エキスパンジョンという概念がない時代、基本セットがMTGの全てでした。
初めて日本語訳された第四版でMTGを知った方は何人残っていますかね?
さて、基本セットは徐々に徐々に立ち位置を変えています。
世界は次々と拡張していきます。
第六版――スタック・ルールが初めて導入された基本セットにおいては、MTGの中心――コアに据えられました。
しかし、ポータルシリーズの失敗により、基本セットの立ち位置は、初心者向けという色合いが強くなっていきました。
そう、MTGは移ろいゆくゲームであり、各セットが期間限定商品です。そのため、将棋や囲碁、数多のボードゲームのようにこれさえ買っておけばという商品がありません。
初心者に勧められるのは基本セットだけだったのです。
含まれるカードのほとんどが再録であり、初心者向けのバニラやフレンチが多く、売れ行きの微妙なセット。
新規カードを収録すれば初心者に優しくないというレッテルを張られ、再録カードを優遇すれば熟練者が買う必要がなくなってしまうという矛盾。
PWデッキなど、初心者向けの製品を拡充させることで、ウィザーズは基本セットの終了を決断しました。
それは、失敗でした。
ええ、失敗です。
間違いなく、失敗だったのです。
スタンダード環境の迷走に、一役買ってしまったのです。
環境の変化がこのゲームの面白いところなのですが、どのような環境にあったとしても、何らかの安全弁が必要でした。
そして、基本セットほど――環境の安全弁たるセットはなかったのです。
ウィザーズが気づいていなかったのは、基本セットが環境を制御する役割を果たしていたことでした。
どのような新セットにも、固有の新しいデザインが存在します。当然でしょう。新しい要素がなければ売れませんし、ゲームも面白くなりません。
そして、セットの目玉に対して――容易な対抗策を入れることは出来ないのです。
墓地をテーマにしていたアモンケットに《安らかな眠り》があったら?
カラデシュに《粉砕》や《再利用の賢者》、《真髄の針》が存在したら?
イクサランに《仕組まれた疫病》が再録されていたら?
出来るわけがありません。
せっかくの新カードは、伸び伸びと使わせるべき――その結果が、禁止カードのオンパレードというお粗末なものでした。
MTGは強いカードを叩きつけるゲームに変質していきました。基本セットの中止による汎用的な対策の欠如が、その一端を担いました。
多様性のあるゲームを生み出すために、その方向性を変えようという努力は認めますが、まだまだ変革の途中です。
恐らく、10月発売の新セットの登場と、カラデシュブロックとアモンケットブロックのスタン落ちがなければ是正は困難だと思います。
カラデシュは、全体的に強すぎました。そのくせ、妨害カードが弱すぎです。妨害になっていないのです。
アモンケットも同様であり、一部のカードだけが強いアンバランスなセットでした。
イクサランは、大体弱いので、何とかなるはずです(笑)
さて、前置きが長くなりましたが、基本セット2019は、それまでのセットを意識しながらも、伸び伸びとカードを再録しているように思えます。
そう、下の環境をも意識している新規カードが登場しているのです。
ストームの類は、とても嫌い |
死儀礼も薬瓶もぽぽいのぽーい |
あ、タミヨウ |
エルドラージ対策かな |
おいおい大丈夫か?
軽い妨害カードが、現環境に欠けているという指摘は、ここ数年されていたものです。
《致命的な一押し》や《削剥》の登場は、各プレイヤーが皆ミッドレンジデッキが好きなわけではないという、ウィザーズの方針転換の現れだと思いたいです。
出来れば、3マナ以下でインスタントなPW対策カードが欲しいところ。
現状、カウンター以外で有効な対策がなさすぎます。
《英雄の破滅》は本当にいいカードでした。完全下位互換である《殺害》という糞カードをFNMプロモしている場合ではないのです。
ん、何で再録したんだ? 25thマスターズに入れているあたり、本気で除去カードの基本に据える気なのかな?
いやいや勘弁してあげてー。そんなの誰も喜ばないから。
MTGには、マナコストが存在します。重いカードは強いです。そして、そんな重いカードに、より軽いカードで対抗することで徐々に優位性を築いていけるのです。
軽いコストのカードで対策すれば、余りのマナで何らかの行動が出来ますからね。
テンポを稼ぐとはそういうことです。
《ヴラスカの侮辱》は環境最高の除去カードの立ち位置を得ていますが、4マナの妨害カードがその立ち位置にあることこそ、カードプールの歪さを表しているのではないでしょうか。
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