2020年3月2日月曜日

現スタン環境におけるジャンド――覚前式バントランプ



世界選手権2019――青白コントロール、ジェスカイファイアーズ、ティムール再生、赤単が覇権を争い(+カニスター)となり、結果として名手PVの優勝で幕を閉じた。

そのまま推移するかと思われたスタン環境。そこに颯爽と登場したのが、チームサイゲームス所属の覚前プロが使用し、PTQを突破したバントランプである。






高橋プロにジャンドと言わしめるその強さは、当ブログ主でもミシック帯入りが出来てしまったほど。

いつもであれば、適当なデッキでダイヤモンド帯でふわふわする腕前――本当に二十年物プレイヤーなのかという疑問があるが、それは脇においておこう。




その程度の技量であっても、バントランプを使用すれば特段苦戦することなくミシック帯に滑り込むことが出来た。



【覚前式バントランプ】

クリーチャー:11枚
3《樹上の草食獣》
4《自然の怒りのタイタン、ウーロ》
4《ハイドロイド混成体》

呪文:21枚
4《成長のらせん》
4《時を解す者、テフェリー》
2《伝承の収集者、タミヨウ》
3《空の粉砕》
4《エルズペス、死に打ち勝つ》
4《世界を揺るがす者、ニッサ》

土地:28枚
4《寺院の庭》
4《繁殖池》
4《神聖なる泉》
4《神秘の神殿》
3《豊潤の神殿》
2《啓蒙の神殿》
2《寓話の小道》
2《森》
2《平地》
1《島》

サイドボード
2《霊気の疾風》
2《敬虔な命令》
2《ドビンの拒否権》
2《魔術遠眼鏡》
1《ヘリオッドの介入》
4《恋煩いの野獣》
2《神秘の論争》 


















週末に行われたMPCでは覚前プロに加え、行弘プロも同じ型のバントランプを使用し、10勝をあげている。

有利とちょい有利と微不利――行弘プロのツィートが物語っているように、多数の土地にマナブースト呪文を取り入れたランプデッキの一種ではあるのだが、とりうる戦略はミッドレンジそのものである。

サイド込みで勝負できる、極端に不利なデッキがない万能感のあるデッキだ。

その特色は、詰め込まれた無駄のないカード群だろう。

ほとんどのカードが、トップして弱い場面が少ないもので構成されている。

《樹上の草食獣》だけは終盤にトップすると破り捨てたくなるカードだが、1→3→5とマナブーストするための必要悪のカードなためしょうがない。

序盤・中盤・終盤と隙がなく、その構造はまさしくジャンドだが、概念は人によって違うため、ピンとこないプレイヤーは多いだろう。

まぁ、雰囲気である。

28枚の土地+11枚のマナブーストで強固なマナベースを構築。

10枚の現代PWで雪だるま式のアドバンテージを獲得。

11枚の除去カードで対戦相手の脅威を防ぎ。

8枚のマナ可変式カードで柔軟に動くことが可能。

16枚のドロー呪文+9枚の占術ランド+タミヨウで手札は序盤から無尽蔵。

10枚の墓地利用カードで、終盤戦に強くする。

8枚の阻害呪文もあるぞ!

とまぁ、優に60枚を超える様々な要素の詰まったデッキである。PWを始め、複数要素を持ったカードが大量に詰まっており、カード単体よりも、デッキ全体で勝利を目指すタイプだ。

デッキを構成する各種要素に触れていこう。



マナ基盤は、28枚の土地と、《樹上の草食獣》・《成長のらせん》・《自然の怒りのタイタン、ウーロ》のブーストカードで構成されている。

2マナ域マナブーストの常連である《楽園のドルイド》の不採用は、全体除去との相性差と、カード単体としての弱さだろう。

《樹上の草食獣》は赤単に対する重要なブロッカーという役割があり、ニッサの早期着地を目指すためにも重要である。《楽園のドルイド》は2/1というサイズが上手く使えず、かといって墓地に行かないためウーロと相性が悪い。



土地28枚の中には、占術ランドが9枚含まれている。呪文だけでみれば、2マナ以下は7枚しかない。疑似呪文として占術ランドを扱えば、16枚換算。先に述べたように、マナブーストを土地を手札から追加で出す呪文に絞っているのもポイントだろう。





除去に関していえば、新ラスゴの《空の粉砕》が3枚、《エルズペス、死に打ち勝つ》が4枚、疑似除去と言える《時を解す者、テフェリー》4枚の計11枚採用されている。

《空の粉砕》はこのデッキであれば、ドロー付きの全体除去として振る舞うことができる。今までは5マナが主流だったが、4マナの軽さは環境を変えうるものだった。アグロデッキ相手には、1マナの違いが生死をわける。

《エルズペス、死に打ち勝つ》は、あの《最古再誕》のアッパー版な英雄譚である。我がボーラス教団としては由々しき事態なのだが、曇りなき眼で見た事実なのでしょうがない。

3マナ以下追放に、墓地からPWorクリーチャーを回収可能と、一粒で二度美味しいカードである。2段階目の+2マナ追加能力も悪くない――かなりうっとおしい。

《時を解す者、テフェリー》でバウンスしたり、《伝承の収集者、タミヨウ》で墓地を肥やしたりと、デッキとして《エルズペス、死に打ち勝つ》を強く使えるように組まれている。

《時を解す者、テフェリー》の強さは今さら言及する必要などないはずだ。バウンスして1ドローで、シャドーバースを強いる常在能力を持ち、端的にふざけている。




PWは10枚。既に述べた《時を解す者、テフェリー》は当然の強さとして、《世界を揺るがす者、ニッサ》4枚と《伝承の収集者、タミヨウ》が2枚採用されている。

疑似的にライフを底上げできるPWを多数採用してアグロ耐性を上げ、それでいて戦場の選択肢を大きく増やしてくれるいつものPWゲーに持ち込むことが可能だ。

このデッキのキーカードは《世界を揺るがす者、ニッサ》だ。《ハイドロイド混成体》と《世界を揺るがす者、ニッサ》の組み合わせは、結局強すぎるのである。

ニッサを強く使うために土地を多めに採用しているといっても過言ではない。土地を多く採用するから、マナブーストはいわゆる《探検》スペルを重点的に使用しているのだ。

草食獣→らせんorウーロor草食獣からの3ターン目ニッサはそれだけでゲームに勝つこともある、暴力の権化のような振る舞いだ。

《伝承の収集者、タミヨウ》は墓地利用デッキでお馴染みの1枚。

ウーロと+1能力が極めて相性がよく、《エルズペス、死に打ち勝つ》と組み合わせると無限のリソースだ。そこからテフェリーは楽しい動きである。

残るカードは、8枚。


《ハイドロイド混成体》と《自然の怒りのタイタン、ウーロ》である。

可変式にマナ域を埋めるハイドロイドが強いのはもちろん、《自然の怒りのタイタン、ウーロ》もまた豪のものである。

デッキ全体の方向性――土地を伸ばし、ドローし、ライフをゲインする能力が全て噛み合っている。

これで、メインボードが完成だ。そのうち、ドローカードが16枚で、占術ランドが9枚採用されている。

ドロー補助が25枚と全体の1/4を占め、事故りにくい。特筆すべきは、それでいて、ドローのみのカードが存在しない点だろう。

ドロー呪文がテンポを失うのは自明の理。しかし、このデッキに採用されたドロー呪文はマナブースト、クリーチャー、PWと、テンポを失いにくい構成となっている。占術ランドもテンポ損が発生しやすいが、11枚の《探検》呪文がカバーしてくれる。


Bant Ramp is Jund.は言いえて妙である。スタンにおける鉄板デッキは過去多数存在するが、《血編み髪のエルフ》型ジャンドの万能性――どんなデッキとも戦える、重戦車のようなデッキ――を持つ、令和のジャンドといえるだろう。

【ジャンド】
クリーチャー:16枚
4《朽ちゆくヒル》
4《芽吹くトリナクス》
4《血編み髪のエルフ》
2《野生の狩りの達人》
2《若き群れのドラゴン》

呪文:19枚
4《稲妻》
1《噴出の稲妻》
2《終止》
4《荒廃稲妻》
3《大渦の脈動》
2《野生語りのガラク》
3《瀝青破》

土地:25枚
4《根縛りの岩山》
4《野蛮な地》
4《新緑の地下墓地》
3《竜髑髏の山頂》
2《巨森、オラン=リーフ》
3《沼》
3《山》
2《森》

これが元祖ジャンドである。今眺めてもその万能さと力強さに憎しみが掻き立てられる。

【アブザンアグロ】
クリーチャー:21枚
4 《始まりの木の管理人》
4 《棲み家の防御者》
3 《搭載歩行機械》
4 《先頭に立つもの、アナフェンザ》
4 《包囲サイ》
2 《風番いのロック》

呪文:13枚
4 《ドロモカの命令》
4 《アブザンの魔除け》
4 《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》
1 《残忍な切断》

土地:26枚
4 《吹きさらしの荒野》
4 《樹木茂る山麓》
4 《溢れかえる岸辺》
4 《乱脈な気孔》
2 《梢の眺望》
2 《ラノワールの荒原》
1 《窪み渓谷》
1 《燻る湿地》
2 《森》
2 《平地》

これもジャンド(アブザン)。アブザンだがジャンドである(哲学)。

【シミックフード】
クリーチャー:20枚
4《金のガチョウ》
4《楽園のドルイド》
4《厚かましい借り手》
4《意地悪な狼》
4《ハイドロイド混成体》

呪文:15枚
4《むかしむかし》
3《霊気の疾風》
4《王冠泥棒、オーコ》
4《世界を揺るがす者、ニッサ》

土地:25枚
4《繁殖池》
2《総動員地区》
2《神秘の神殿》
11《森》
6《島》

これはフード。

バントカンパニーもジャンドじゃないな。ジャンドPWはジャンドで、4Cフリッツはジャンドじゃない。

何がジャンドで何がジャンドかわからない?



我々は雰囲気でMTGをやっているのだ。

細かいことはいいのである。

この手のランプデッキは赤単に弱いというのが、MTGのお約束である。しかし、こと覚前プロ構築のバントランプに関しは、甚だ浅い見識と言えるだろう。







ほんま見識浅い時あるけど、実際に回したんだろうか?

あれかな、弱い弱い言いながら回してんのかな。

体感の勝率って本当にあてにならないよね。

体感で言うと、採用されている除去が全体除去と《エルズペス、死に打ち勝つ》なため、2マナ以下のアドバンテージ源に弱い印象がある。

軽量のアドバンテージ源を擁するティムールアドベンチャーのアドバンテージによくいわされるのだが、行弘プロはほとんど負けないと配信で言っていたので、やはり体感なのだろうか。




アリーナランキング上位プレイヤーであるcrokeyzさん使用のバントは《秋の騎士》や《神秘を覆う者、ナーセット》、《夢さらい》に各種色対策カードを投入した構成である。



違いを出すカードはどれも癖があり、強い場面があれば弱い場面もあるため、必然的にプレイングが難しくなる。

ヤソコンが八十岡プロ以外に使いこなせないのと似ているが、この形もまた強いデッキだ。

ランキング2位に文句を言えるのは、1位のプレイヤーだけだ。同じデッキで負けるということは、プレイヤーの技量の差だけとなる。

特に《神秘を覆う者、ナーセット》は同型戦でキーになるPWだ。

バントランプは複数枚のドロー呪文+占術ランドでデッキを回転させていく構造のため、この青いPWが場にいるだけで機能不全になることがままある。

《世界を揺るがす者、ニッサ》と《エルズペス、死に打ち勝つ》であれば打開できるが、それは対戦相手も一緒。ナーセットはキーカードを手札に加わえていくため、早期に処理しなければいけないカードだ。







MPLプレイヤーである行弘プロのMPC振り返り動画が公開されている。強豪プレイヤーのプレイングにすぐアクセスできるし、その時の考えだって伺い知れる、本当にいい時代になったものである。

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