カードプールの拡張とともに強力デッキに禁止をかけて、それでも結果を残し続けているデッキばかり、そう簡単に環境が変わるわけがないのだ――特に、今回カードプールに加わったのは基本セット。
再録中心のセットが環境に与える影響は限定的になりやすいと過去が示している。
《悪斬の天使》やタイタンシリーズ、オリジンジェイスが環境を圧巻した記憶があるが、それはさておき。
ウギンウーズをTop3に入れるくらいなら「3位、油揚げ。お味噌汁に入れると風味が出るので良いアクセントになります。」とかの方が良い。— Yuuki Ichikawa (@serra2020) June 24, 2020
そんな見飽きた環境に覚前プロが投げ込んだのが――黒単アグロだ。
今月の宿題終わり😊— 覚前輝也/Teruya Kakumae (@fushiginokunin5) July 1, 2020
現状のメタゲームで最高のデッキだと確信しています。
PTがM21でなかった事が悔やまれる😭
I feel it's the best deck in the metagame right now! pic.twitter.com/R2ZD80b5oG
【黒単アグロ】
クリーチャー:27枚
4《漆黒軍の騎士》
4《どぶ骨》
4《鋸刃蠍》
4《黒槍の模範》
4《騒乱の落とし子》
4《朽ちゆくレギサウルス》
3《悪ふざけの名人、ランクル》
呪文:9枚
4《取り除き》
1《闇の掌握》
4《悪魔の抱擁》
土地:24枚
20《沼》
4《ロークスワイン城》
サイドボード
4《害悪の掌握》
4《強迫》
2《闇の掌握》
2《見栄え損ない》
2《魂標ランタン》
1《はぐれ影魔導士、ダブリエル》
パイオニアでトップメタを張り続ける黒単アグロ。
元々クリーチャー陣は、《朽ちゆくレギサウルス》や《漆黒軍の騎士》と、パイオニアでもスタメンを張る粒ぞろいの陣容を獲得していたが、妨害手段とフィニッシュ手段に欠けるきらいがあり、スタンでは今一歩の立ち位置だった。
軽量級から中量級までクリーチャーはいるのだが、その多くが地べたをはっているため、戦線を固められると突破できない。
ジャンドサクリファイスの猫かまどセットや、ティムール再生のサイドに複数枚とられた狼がいい例だ。
戦線を突破できず右往左往している間に、《朽ちゆくレギサウルス》という諸刃の剣が手札をずたずたにして最後の一押しすら許されなくなってしまうのだ。
一応、飛行クリーチャーは7枚存在するのだが、赤単アグロのフィニッシュブローである《エンバレスの剣》や《朱地洞のトーブラン》ほどの破壊力を持ちえなかった。
粘り強さはあるが、勝ちきれないデッキという印象である。
相棒カードのルール変更も向かい風。手札+1を上手く活用できるのが、アグロ戦略だった。
今回採録された土地が対抗色占術ランドだったのも、アグロ戦略にとっては向かい風である。占術ランドはミッドレンジ以降の戦略に合致してはいるが、序盤ターンに重点を置くアグロデッキにとってはただのタップインに過ぎない。
そんな黒単アグロの福音といえる新カードが《悪魔の抱擁》だ。+3/+1と飛行と、黒単アグロの欲しかったフィニッシュブローだ。《朽ちゆくレギサウルス》に付与すれば10/8飛行と一撃必殺である。
それでいて、墓地から唱えることが可能だ。オーラの弱点は使い切りという点だが、このエンチャントは手札1枚と引き換えに使い回しが可能。
1/2だろうが2/1だろうが、強力な飛行クリーチャーに修正できる。むしろ、序盤に活きる軽量クリーチャーを強力な打点に変更できる点を尊ぶべきか。相手のライフを0に出来るなら、手札が何枚でも問題ない。
スタンの黒単アグロは、《朽ちゆくレギサウルス》という超短期決戦カードと一心同体の存在といえる。まるで燃えおちる前の蝋燭のように、毎ターン手札を捨てさせていくという強大なリスクを軽減できる方法があるにこしたことはないのだ。
基本セット2021で新たに加わった戦力は、《悪魔の抱擁》だけではない。《取り除き》、そして《闇の掌握》は、黒単アグロが喉から手が出るほど欲していた重要パーツ――軽量の妨害手段だ。
前環境までの黒単アグロは、攻撃一辺倒でありながら、戦線をこじ開ける手段に欠けていた。除去カードが弱すぎたのだ。使い物になるのは、クリーチャースロットを兼ねる《残忍な騎士》程度、とはいえ、3マナは決して重くはない。
《致命的な一押し》とまでは言わないが、軽量の除去カードがあれば引き締まるのにと枕を涙で濡らした黒使いは全国に多数存在するだろう。
《燻し》の上位互換である《取り除き》は、まさにそんな願望を叶えるカード。憎きウーロもテフェリーも、これ1枚で安らかに眠ってくれる。これで枕を高くして眠れるというものだ。
《闇の掌握》も、過去に実績ある除去カードだ。要求するマナシンボル上、タイトなマナベースを必要とするが、黒単ならば何の問題もない。
黒マナソース24のデッキの、どこに問題があるというのだ?
黒単アグロは、早い、太い、粘り強いと、上記した現スタン環境にマッチしたデッキといえるだろう。
重いデッキにメタを合わせる昨今の風潮、そんな重戦車戦略全盛期に風穴をあけるかもしれない。
基本セット2021で、痒いところに手が届く――いいカードを手に入れたものである。
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